学校での休み時間は、短いですが大切な時間です。
皆さん、この限られた時間を有意義に過ごしましょう♪

「小学生じゃあるまいし、そんなコトわかってるわ。
・・・それより・・・・・・なんで千代がココにいるのよ〜〜〜!!!」



陽のあたる場所で。―1―



昼休み。聖徳学院中等部の校庭には、幾らかの生徒が散らばっていた。
小学校や幼稚園みたいに遊具があるわけではないので、外での時間の過ごし方は当然限られてくる。 例えば 男子生徒ならサッカー、女子生徒ならテニス という具合に。


「かくれんぼにしよう!!」

天高く手を上げて、三好健三はこう主張する。
それに賛同するは 単純な才蔵と左介。
「かくれんぼですかー!懐かしいですねぇ〜」
「おうっ!昔、里にいた頃も流行ったよな!!」

かくれんぼには 流行りも何もないような気もするが・・・・・・・・・。



ヤル気の三人に比べ、残りのメンバーはと言うと、
「かくれんぼ??・・・才蔵が一緒ならんなんでもいーわよんv」
「健三・・・中学生にもなってかくれんぼとは、嘆かわしい・・・」
「もうどーにでもなさいよ。しの知らない・・・・・・」

どれがだれの台詞なのかはご想像におまかせするとして、
この提案は満場一致で(?)決定したのであった。










組み分け、チーム分けの手段には、一般的にじゃんけんが使われる。
かくれんぼもまた然りで、しのたちもじゃんけんをしたのだが しの、健三、左介はパーを出し、才蔵、晴海、千代はグーで 見事3対3に分かれたのであった。 この人数でかくれんぼの鬼の人数といえば、一人、多くても二人が妥当だ。
「・・・やり直しね。」
一同、仕切りなおしだと思った。・・・・・・・・・千代以外。

「こうなったら、新ルールを作らない?」
不敵な笑みを浮かべ、彼女はこう言ったのだった。



新ルール。

かくれんぼとは鬼役が隠れている人間を捜し見つけるというゲームだが、千代流に言うと これは捜す側と捜される側との戦いらしい。

「コレは基本でしょ?でも私は、鬼同士も競い合うべきだと思うのよ!」
ちちち、と指を振る千代。 ぽかーんと口を開けてそれを聞く一同。

「丁度3対3だし、ひとりずつ標的を決めて、鬼同士 その標的を捕らえた順番を争おうってワケ。
簡単でしょ??」

ばち。 挑戦的な千代の視線が、しの の瞳とぶつかった。

コレは、千代からの挑戦だ。
しのは思う。いや、十中八九、そう確信できる。

「かくれんぼをやることは許したケド、こんな勝手な決まりを認める覚えはないわ!」
千代の提案にしのは断固反対したが、健三と左介の執拗な気合と情熱に負け・・・・・・・・・・



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

重苦しい空気を身にまとい、明らかに機嫌を悪くしているしの。
そんな彼女を見ていた才蔵の慌てっぷりは、想像するに難くないであろう。

だが、彼女の機嫌が悪い理由は他にもあったのだ。



しのは捜される側で、才蔵は捜す側。





・・・・・・・・・別々だわ・・・・・・・・・。





しのは ほう、っと暗い溜息。



かくしてここに、昼休みかくれんぼ大会の幕が切って落とされたのだった。



◆◇◆



校庭で一番大きな木の下。
ここを 全員の集合場所と決めた。



「じゃあ鬼は百数えますから、その間に隠れてくださいね。」
晴海の言葉で、それぞれが行動を開始する。

「・・・千代姉、どうしてあんなルールを・・・?」
しの、健三、左介の姿が見えなくなった後、才蔵は千代に訊ねる。
「アラいいじゃない。ゲームを面白くしようとしたのよv」
「・・・そうじゃなくてっ!」

千代からしのへ向けられた、あの挑戦的な瞳。
あれは、明らかに・・・・・・・・・


「・・・千代姉、しのぶさまを追うつもり・・・?」


勝負だ、と言っていた。





千代はにやりと笑み、ゆっくりと口を開く。
「・・・姫を追うのはもちろん・・・・・・・・・」

「お話の途中申し訳ないんですが、百数え終わったんですけど。」

才蔵の後ろから、晴海はぴしゃりと声をかけた。
晴海に まかせっきりだったことを思い出した才蔵は、慌てて謝罪の言葉を口にする。

「す、すみません・・・」
「・・・別にいいんですけど。ところで、誰が誰を捕まえるコトになったんですか?」
「・・・そうね・・・あなたは先に、双子の片割れを捜しなさいよ。私達は後から他の二人を追うわ。」

あっさりと、千代は言い放つ。
目を丸くする才蔵。

「千代姉っ・・・ソレは・・・」
「あら なあに?一般人と忍者では迅速さが違うでしょ?
そこのお嬢さんと私達とでは、力の差がありすぎるわ。」

千代の言葉に、晴海はちょっとむっとする。
しかし、彼女の言うコトは本当だ。

「・・・・・・わかりました。」

晴海は素直に従う。大人な態度。
これがしのだったら、頑固に拒み続けるだろう。

晴海は大木にくるりと背を向けると、走り去った。


残される、千代と才蔵。


ザワザワと木の葉が揺れ、枝々たちが犇いた。


「・・・さてと、二人っきりね、才蔵。」
「ち、千代ねぇ・・・?」

急に妖艶な口調に変わった千代。才蔵は思わずあとずさる。





瞬間、



がばっ!!!



「・・・・・・ッ!?」





視界が、ぼやけた。





才蔵の眼鏡が取られたのだ。千代に。

「千代姉っ、なにす・・・・・・・・・」
「・・・あんたの標的はしの姫よ、才蔵。」




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