―――冬、ソレは学生達にとって 魅惑の季節。



Bitter Sweet Mystery(前編)



・・・なんか変だな、そう感じたのは昨日のコト。


燕雀探偵社。ここの少年探偵、ロキの部屋にはいつものように 押しかけ助手、まゆらがいた。

「ふあ〜あ・・・」
「・・・ちょっとまゆら、もう少しおしとやかにできないの?」



あまりの大きなあくびに顔を顰めるロキ。
そんな彼の表情を見て、ごめんなさ〜い、というカンジでまゆらは舌を出した。

「眠たくもなるのよね〜なんたって明日は・・・ととっ・・・」

まゆらはいいわけの途中で、慌てて口をつぐむ。
そこをロキは見逃さない。

「・・・明日は・・・なんなのさ?」
「・・・・・・・・・なぁ〜いしょ!明日になったら分かるよ!」


ロキに尋ねられて一瞬焦った顔をしたまゆらだったが、すぐにいつもの笑顔に戻った。
しかし、そんな風にはぐらかされると・・・気になるのが人の情というモノである。

「・・・なにソレ・・・もったいぶらずに教えてくれてもいいだろ・・・?」

ロキがスネたそぶりを見せても、まゆらはにこにこ笑っているだけだ。

「さってと、私 もう帰らなくっちゃ!じゃあね、ロキくん!」
「・・・ちょっ・・・まゆら!?」
「あ、明日もいつもの時間に来るから、絶対おうちにいてね!!」


絶対だよ、と人差し指を可愛く立てて駄目押しをしてから、まゆらはいつもよりも早く帰って行ったのだった。





・・・・・・おかしい、まゆらは何か隠してる。


ロキは腕組みをして 椅子に座る。


昨日の彼女の様子・・・なんだかそわそわしていて・・・・・・


そのとき、威勢良く扉の開く音がした。

「おぉ〜いロキ〜〜飯食わせてくれぇ〜!!」

この人物の登場で、ロキの思考は停止を余儀なくされる。
ロキは嫌そぉ〜な顔で、来訪者の方を見た。


「・・・ナルカミくん、あのさぁ・・・朝早くからそんな用事で来たのかい?」
「うるっせぇな!飯食わねぇと 学校での内職がはかどらねぇんだよ!」


鳴神の主張は、なにか間違っているような気もするが・・・・・・。


ロキは暫くなにか考えていたが、はぁっとため息をつき、首を縦に振った。

「・・・わかった、ごちそうするよ。・・・・・・でも・・・・・・」

ロキは上目遣いで鳴神を睨んだ。邪神の目だ。

「キミの知ってるコト全部、教えてもらうよ・・・!」




テーブルの上に闇野の手料理が並んでいる。
その皿のいくつかは、既に空だったが。

「・・・というワケなんだ。ナルカミくん、何か知らない?」

鳴神はがつがつと喰らいながら、ロキの話を聞いていた。
料理を一皿食べ終え、また新しい皿に手を伸ばしながら鳴神は相づちをうつ。

「・・・・・・そおか〜・・・ふ〜ん・・・なるほどな〜・・・へ〜・・・」

彼のそのわざとらしい態度に、ロキは確信した。

「・・・ナルカミくん、キミ、理由を知ってるね・・・?」


ちゃりーん。


ロキにずばりと言われ、持っていたフォークを落とす鳴神。

「んな・・・っ・・・な〜んで俺が知ってんだよぉ〜!あ・・・あはははは・・・」

否定はしていた。だが、目は口ほどにモノを言う。

鳴神の目線は泳いでいた。

ロキは小さくため息。

「・・・正直にいいなよ。・・・ホントにキミは嘘が下手なんだから・・・」

ロキの発言に、鳴神はカ〜っと血が上ったようだ。
勢いよく椅子から立ち上がり、びしっとロキを指差した。

「な・・・なんだよ〜!ソレってお前、大堂寺のコト気になってるってコトじゃね〜の!?」
「う・・・なにがさ・・・キミに関係ナイだろ。ソレにボクは・・・」
「あ、ナニ?ロキ、お前照れてんの??」
「〜〜だ〜か〜ら〜〜!!」


立場逆転。


鳴神の言葉にロキはたじろぐ。

「大堂寺のコトをそんなに聞きたいのかぁ〜そっかそっか〜あっはっは!!」
「もういい!!キミには聞かないよ!ボクは探偵だからね、自分で調べるさ!!」

こんな状況に耐えられなかったらしい。ロキは普段にそぐわない、大声で叫んだ。
お腹もいっぱいになったらしい鳴神は、へへへん!と笑っている。

「ソレがいいぜ、ロキ。まあせいぜい頑張ってくれよ。ごちそ〜さん!」

ぜぇぜぇと怒りに肩を震わせているロキを後目に、鳴神は探偵社を後にした。
学校へと急ぎながら、彼は呟く。

「・・・危なかったなぁ〜ロキにバレたら、もらえるモンも もらえなくなるところだったぜ〜」

正義の見方に遅刻は厳禁!、と 足を速めた鳴神だった。




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