大堂寺 まゆら。
容姿で 彼女の特徴的な部分と言えば、
腰の辺りまである、薄桃色のさらさらした髪。
大きな瞳に長いまつげ。
色白の肌。
小さな、桜色の唇。

ただ、今日の彼女のいつもと違う部分は、
髪に結んだ、大きな空色のリボン。
ふわふわのエプロンドレス。


そしてなにより明らかなのは 目線の高さ、だった。



ゆめみたあとで



頭がぼんやりしている。
足元がふわふわ、おぼつかない。
ロキは試しに 頬をつねってみる。



・・・・・・感覚が ない。



そうか、コレは夢なんだ。
ほっと胸を撫で下ろすと、

「おにーちゃ、なにしてりゅの??」

いつもの半分ほどしか背のないまゆらに、ぐいぐいと上着を引っ張られた。

そんな彼女に気づき、ロキは はっと我に返る。




でも、なんで ボクの夢にちびまゆらが出て来るんだよ!?




とりあえず、夢でよかったと思った。
現実にこんなコトが起こったら、また神界での厄介ごと関係(フレイのヘンな発明や ノルン達の仕業)に違いないからだ。

とりあえず 平静を装って、目前の彼女に なんでもないよー、と 微笑みかける。
するとまゆらも安心したのか、にっこり笑い返してきて、そして 言った。

「おにーちゃ、たんてーしゃんなんだよね?まゆりゃのさがしもの、みちゅけてほしーの!」

「・・・まゆらの、探し物??」

ロキが繰り返すと、まゆらは うん!と大きく頷く。

「ママがいってたにょ。さがしものがみちゅからにゃいときは、
たんてーしゃんにたのみにいけばいいんだよ、って!」

そう言うと、満面の笑みを浮かべる彼女。

探偵に依頼すれば なんでも思い通りにいくと思ってるんだろうな。


いつもなら、「探偵だからって、そんなに楽に見つかるもんじゃないよ。」などと言って渋るところだが、相手はまゆら。・・・・・・しかも、幼い子供の姿ときてる。


まあいいか、どうせ夢だし。

ちびまゆらの探し物といえば、うさたんのぬいぐるみとか そのくらいだろうし。

ロキははぁ〜っと溜息をつくと、まゆらに尋ねる。

「で、まゆらの探し物って なに?」



「かみちゃま。」



まゆらの出した一言に、ロキは目がテンになった。

「・・・かみちゃまって・・・神様のコト?」

ロキの問いに、こくり とまゆらは頷く。




子供はときどきワケのわからないコトで大人を困らせると言うが・・・・・・・・・




「あー・・・えっとぉ〜・・・まゆらはなんで神様を探してるのかなぁ??」

にこにことわざとらしい笑いを浮かべ、そこはかとなく聞いてみるロキ。

するとまゆらは、エプロンの裾を玩びながら、言った。

「・・・まゆりゃね、かみちゃまに あってみたいの。
そんでね、どーしてまゆりゃのおねがいきいてくれなかったのって きいてみたいの。」




小さなまゆらの、たったひとつの願い事。

それは、大切な人を連れて行かないで欲しいという、簡単に叶いそうで叶わない 願い事。




そして目の前には、瞳いっぱいに涙を溜めた彼女がいる。




でも、今のボクには見つけられないや。キミの探し物は。

たとえ、探偵であっても。・・・・・・・・・・・・神であっても。




ロキは大事なものを扱うかのように、ふわっとまゆらの頭をなでた。

「・・・もうちょっと大きくなってからおいで、まゆら。そうしたら 逢わせてあげるから。」

「・・・・・・ホント??」

「本当さ。じゃあ 約束のしるしに、コレをあげよう。」

そう言ったロキが取り出したのは、真っ赤なリボン。
まゆらの髪のリボンを解いて、それを代わりに巻いてやる。
髪に結ばれたリボンに手を当てているまゆらは、嬉しそうにぴょんぴょん跳ねた。

「わぁ〜!ありがちょ、おにーちゃ!!」

じゃあまゆりゃ かえるね! そう言ってドアの方へ駆け出した彼女だったが、
ふとなにかを思いついたらしく、くるっとロキの方に振り返ると、

「そぉだ!おにーちゃのなまえ、なんてゆーの??」
「・・・ロキ、だよ。」


「ろき、ろき、ろき、ろき・・・ロキきゅん!」


ロキの名前を呪文のように唱えると、小さなまゆらは満足げに笑った。





「・・・・・・ロキくん!ロキくん!!そんなところで寝てると 風邪ひくよー!!」

けたたましい声で、ロキは目が覚めた。
うっすらと瞳を開けると、そこは現実。

「・・・あ、まゆら。」

・・・・・・・・・そうか、あれは夢。


あはは、と乾いた笑いを浮かべ、ふと まゆらの方を見ると・・・・・・

「・・・えっ!?」

ロキは、己の目を疑った。

まゆらの髪で、
夢の中 確かに自分が小さなまゆらにあげた、真紅のリボンが揺れていたから。

「まゆら・・・そのリボンは・・・?」
「あーコレ?昨日押し入れを整理してたら、ちっちゃい頃の宝石箱が出てきてねー、貝殻とかおもちゃの指輪に混じって入ってたの。お気に入りだったんだぁ、昔v」


そう言うと、くるりとターンをきめる まゆら。


「・・・まさかね・・・。」


きれいな髪にまじって、さらりと彼女の肩を滑るリボンを見ながら、ロキは小さく呟いた。





さて、幼い少女との約束は


果たされたのやら そうでないのやら。





紫坤ミズキさまリク、ロキまゆ文。
どうもありがとうございました!

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