暗い空の下で、
本当のボクに気づいていてくれていたのは。




solitude



「いつもと同じ帰り道なのに、どうして雨の日はこんなに雰囲気違うのかしらねェ〜」

などと呑気なコトを独りごち、水たまりをよけている少女――大堂寺まゆら。
彼女の頭の上では、新品の空色のかさが揺れている。
いつもなら、おろしたてのかさを片手にスキップでもしたくなるところだが、今日はとてもそんな気分にはなれそうになかった。



どしゃ降り。

………………そう、ひたすら雨、アメ、あめ。



「天気予報でも今日は大雨だって言ってたケド、まさかここまで降るなんて〜…」

かさの縁からとめどなく滑り落ちる雨粒。
まるで水のベールに包まれているみたいだ。





そんな中、一際明るいモノが視界に入る。

「………?」




彼女の目に飛び込んできたのは、
月と同じ、銀色の髪を持つ 少年。
上等の絹糸のような髪の毛からも、大粒の雨が滴っていた。
「……こんなところで何してるの…?」
まゆらはそっと彼に近づき、自分のかさをさしかけた。



「さがしていたのだ。」



銀髪の少年は俯いたまま、こう 答えた。







『何をさがしていたの?』なんて、聞いてはいけない気がした。



「…そっか。ねえ、もしかしてかさ持ってないの?よかったら、途中まで一緒にいこっか?」
まゆらがにっこり微笑むと、少年は無言で歩き出してしまう。
「え、あっ……ちょっと待ってよう!」
まゆらは慌てて、その後を追いかけた。




まゆらの前方で揺れているのは、少年の身体に似合わない、長い、黒いマント。
それは雨水を吸って、余計に重力を感じているように見える。


「ソレ、重くない??」


ザーザーと降り続ける雨の音に負けないようにまゆらは大声で叫んだ。
「…別に、なんともないが。」
少年はまっすぐ前を向いたまま、それでも少し歩くペースを落として答える。
「そうなの?…ね、こんな日に独りで外にいたら、おうちの人が心配してるんじゃナイかなぁ?」



まゆらの問いに、ぴたりと少年の足が止まった。




「…………りだ。」
「え?」
「……余は、ひとりなのだ。」




だから、さがしていた………?




「まゆら!」
突然呼ばれた声に振り向くと、そこには息を切らしたロキが立っていた。
「ロキくん!?」
「……こんなところで、何してるんだよ……。」
鋭い目つきで睨むロキ。
その瞳にはまゆらではなく、彼と同じ背格好の少年の姿が映っている。



「……まゆらに何をした?」
疑問符を浮かべるまゆらをよそに、ロキは銀髪の少年を見据えたまま、言った。
「別に何もしていない。ただ雨を遮らせてもらっただけだ。」
顔色ひとつ変えず、答える少年。
……正確には、暗い空と長い前髪で見えなかったのだが。


少年は静かにまゆらのかさから出て行く。
「あっ…あの………。」
自分を呼び止めたのだと思われる、少女の遠慮がちな声。


「…見つかるといいね、さがしもの。」




雲がはれ、光がさして。




まゆらの言葉に、銀髪の少年は ふっと笑んだ………ような気がした。




ある雨の日に出会ったのは
見ているモノが全然違う、
不思議な不思議な 男の人。





hazukiさまのリク、ウトまゆロキ文でした〜。
どうもありがとうございました!

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