暗い空の下で、
本当のボクに気づいていてくれていたのは。
solitude
「いつもと同じ帰り道なのに、どうして雨の日はこんなに雰囲気違うのかしらねェ〜」
などと呑気なコトを独りごち、水たまりをよけている少女――大堂寺まゆら。
彼女の頭の上では、新品の空色のかさが揺れている。
いつもなら、おろしたてのかさを片手にスキップでもしたくなるところだが、今日はとてもそんな気分にはなれそうになかった。
どしゃ降り。
………………そう、ひたすら雨、アメ、あめ。
「天気予報でも今日は大雨だって言ってたケド、まさかここまで降るなんて〜…」
かさの縁からとめどなく滑り落ちる雨粒。
まるで水のベールに包まれているみたいだ。
そんな中、一際明るいモノが視界に入る。
「………?」
彼女の目に飛び込んできたのは、
月と同じ、銀色の髪を持つ 少年。
上等の絹糸のような髪の毛からも、大粒の雨が滴っていた。
「……こんなところで何してるの…?」
まゆらはそっと彼に近づき、自分のかさをさしかけた。
「さがしていたのだ。」
銀髪の少年は俯いたまま、こう 答えた。
◇
『何をさがしていたの?』なんて、聞いてはいけない気がした。
「…そっか。ねえ、もしかしてかさ持ってないの?よかったら、途中まで一緒にいこっか?」
まゆらがにっこり微笑むと、少年は無言で歩き出してしまう。
「え、あっ……ちょっと待ってよう!」
まゆらは慌てて、その後を追いかけた。
まゆらの前方で揺れているのは、少年の身体に似合わない、長い、黒いマント。
それは雨水を吸って、余計に重力を感じているように見える。
「ソレ、重くない??」
ザーザーと降り続ける雨の音に負けないようにまゆらは大声で叫んだ。
「…別に、なんともないが。」
少年はまっすぐ前を向いたまま、それでも少し歩くペースを落として答える。
「そうなの?…ね、こんな日に独りで外にいたら、おうちの人が心配してるんじゃナイかなぁ?」
まゆらの問いに、ぴたりと少年の足が止まった。
「…………りだ。」
「え?」
「……余は、ひとりなのだ。」
だから、さがしていた………?
「まゆら!」
突然呼ばれた声に振り向くと、そこには息を切らしたロキが立っていた。
「ロキくん!?」
「……こんなところで、何してるんだよ……。」
鋭い目つきで睨むロキ。
その瞳にはまゆらではなく、彼と同じ背格好の少年の姿が映っている。
「……まゆらに何をした?」
疑問符を浮かべるまゆらをよそに、ロキは銀髪の少年を見据えたまま、言った。
「別に何もしていない。ただ雨を遮らせてもらっただけだ。」
顔色ひとつ変えず、答える少年。
……正確には、暗い空と長い前髪で見えなかったのだが。
少年は静かにまゆらのかさから出て行く。
「あっ…あの………。」
自分を呼び止めたのだと思われる、少女の遠慮がちな声。
「…見つかるといいね、さがしもの。」
雲がはれ、光がさして。
まゆらの言葉に、銀髪の少年は ふっと笑んだ………ような気がした。
ある雨の日に出会ったのは
見ているモノが全然違う、
不思議な不思議な 男の人。
hazukiさまのリク、ウトまゆロキ文でした〜。
どうもありがとうございました!
