12月24日、クリスマスイヴ。
それは恋人たちの大イベント、家族との憩いの日とも言われているみたいだが、
貧乏学生にはそれほど関係の無いハナシであって。



サンタのお休みtime


商店街。クリスマスだということで、お菓子屋さんをはじめ ほとんどの店がクリスマスセールをやっている。その中でも、ひときわ大きな声で客を呼び込むサンタがひとり。

「ら〜っしゃいませ〜!本日は限定ケーキがお安くなっておりますぅ〜♪」

サンタはおじいさんだ という話だが、このサンタは違っていた。
真っ赤な衣装からすらりと伸びた足に なぜか手には木刀を持った青年…鳴神は今日もバイトに勤しんでいた。
「なぜだ…なぜぜんぜん人が来ねぇ…!!」
自称鉄腕アルバイターであり、神でもある彼にとっては客を一人も捕まえられないのがショックなのだろう。
元気なく肩を落とし、うつむいた。



「鳴神くん、そんなんじゃお客サン逃げちゃうわよ?」
「…大堂寺??」
鳴神が顔を上げると、そこにはよく見知ったクラスメイトの顔。
彼女は 大堂寺まゆら。


たしか今日は・・・・・・



「ロキんちでクリスマスパーティじゃなかったのか?」
「うん、もう終わったよ。」
まゆらは ケロリと言い放つ。
それは鳴神にとっては、とてもショッキングなニュースだった。
「な、なにィ〜〜!??ソレじゃ、俺の飯は!?…ケーキは!?」
今年はいつものメンバーに加え、大食漢のスピカがいるし、鳴神の分の料理が残っているハズがない。
「クリスマスなんて、大っキライだぁ〜〜」
魂が抜け、白くなっている鳴神の肩をぽんと押すまゆら。
「だーいじょぶだよ!鳴神くんv」
はいっ!と差し出したのは 一切れのチョコレートケーキ。
「鳴神くんの分、ちゃ〜んと私がとっといたんだよ。感謝してよね!」
「おおお〜サンキューな、大堂寺〜」
神である自分がひとりの少女を泣きながら拝んでいる というのは、さすがに情けない姿だな〜と鳴神は感じた。





・・・だから今日くらいは・・・





「よっし!俺も大堂寺にプレゼントをやろう!!」
「えーー鳴神くんがぁ??いいよぉ無理しなくても〜」
まゆらはニコニコ笑って手を振った。しかしこのままでは男がすたるというものだ。
「イヤ、今日の俺はサンタだ!!」
サンタクロースは、いい子にプレゼントをあげるもの。
「…ソレじゃあ、なにくれるの??」



・・・・・・



プレゼントを買う金はない。……ないが……
「えーとな、このケーキをやる!まるごと1コ!デコレーションケーキだぞ!!」
鳴神が掲げたのは、いま自分がセールしている大きなクリスマスケーキ。
「えーだめだよ〜ソレ、商売モノじゃない!」
「いーんだよ、どーせ今日限定のケーキなんだ。こんなに余ってるしな!」
「だけど…私が持ってきたケーキはこんなに小さいし、こんなに大きいの貰ったら悪いよ…」
「んだよ、らしくねえな!サンタの言うコトがきけねーってのか!?」



ぐーーーーーーーーー……。



大きなお腹の音。鳴神の方向からだ。
「違っ…!!今のはっ…そのな、あの、別に腹がへってるワケじゃっ…!!」
うろたえる鳴神。それを見て、まゆらはくすっと笑った。
「…ソレじゃ、ね、」





――半分コしよっか、サンタさん??――





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