報われない想いなんて、いっそ、捨て去ってしまえたらいいのに。



NEVY TEARS



レイヤは学校から帰る途中に見てしまったんです。

「アレはロキさまと…」

スピカさん…でしたっけ…?

街をお二人で歩いている姿はとても仲良さげで…。





気付いたら出てきていたのよ、私。
美と豊穣の女神、フレイヤが。





「なぁによっ!ロキなんてもう知らないわっ!!」


神界ではプレイボーイと謳われていた貴方だけど、
人間界に来てもいろんな女に手を出していたのね。



「どうして私じゃないのよ…。」


ぽつり、つぶやいた。





私はフレイヤ。
神話界では一番の美女と呼ばれている神。

いくら甘い言葉を囁かれても振り向かないわ。
貴方みたいな人、相手になんかするもんですか!



「本当に、もう…知らないわよ…」


ぽとり、涙がこぼれた。


―――ここに貴方が来てくれたら…。―――



「なにやってんだよ、フレイヤ。」


聞こえてきたのは、あの人の優しい声じゃなくて。

「…トール…」

人間界ですっかり容貌の変わってしまった、彼、だった。





「な、なんでもないわ!!」

ごしごしと目をこすって涙を隠す。
泣き顔を見られたくなかった。


『誰にでも泣き顔をみせるような安い女じゃない。』


少なくとも、自分ではこう思ってた。



ふーん…なんて言いながら、トールは私の顔を覗き込んでくる。

「なによっ、用があるならはっきり言いなさいよ!!」
「フレイヤ、今日はまたいちだんとカリカリしてんな〜」

ノーテンキな彼の口調に、私はつんとそっぽを向いた。

「ほっといてよ!」



こうまですれば、いなくなると思ったのに・・・。


「ほい。」


目の前になにかつき出された。


「なに、コレ…」


ビニールの袋に入った・・・


「メロンパン。腹が減ってるとイライラするんだってサ。 …だから、お前にやる!」

そう言って、彼はにんまり笑った。
まるでさっきの私の涙の理由を知ってるような顔で。



「なによう!いらないわよ、こんなの…っ!!」
「こんなのとはなんだ!ソレ買うのにどんだけ働かにゃならんと思ってんだ!!」

ありがたく貰っとけ!と、人間くさいセリフをはきながらトールは去っていった。



「…ビンボー人のクセに、なにムリしてんのよ…」


私はひとり、メロンパンをかじる。
噛み締めると、鼻の奥の方がツンとした。



―――甘い……


ゆらり…視界が揺らぐ。



「…っ…なによぉ……おせっかい……」


だけど、こんなとき
もうひとりの私なら素直にこう言うのかもしれないわ。








『ありがとうです』と。







〜そのころ〜

鳴神「おーいロキ〜飯食わせろ〜!!」
ロキ「また来たのかい、キミは…」
鳴神「しゃーねーだろ、夕飯やっちまったんだからな。お前のセイだ!!」
ロキ「…なんで??」






鳴神フレイヤ。
マイナーカップリング道どんとこいです。

作品ページへ