見上げれば、すいこまれそうな青と。
気持ちのいいボールの音と。




Mystic Blue




眠たい授業も終わり、いざ放課後!
自分のやりたいことができる自由な時間。

ぞれぞれが急いでいる中、例外もなく越前リョーマも部室へと急いでいた。
本人としては急いでいるつもりはなかったかもしれないが、夢中なことにかける時間は1分でも長い方がいい。
そう考えると、自然に足早になる。


部室に向かう途中、裏庭のフェンスのところでちらちら動く影が見えた。

・・・・・・なんか、見たコトある動き・・・・・・。

無意識のうちに、足が動いていた。

・・・・・・やっぱり。

「竜崎…何してんの?」
「…っえ…!?リョーマくん〜??」

あまりに変なアクションを起こしていたので思わず声をかけてしまったが、相手は情けない顔に潤んだ瞳。
頼りない猫を連想させるかのよう。

「…まあ、聞くまでもなく…大体の予想はついたケドね。」
フェンスには人が一人抜けられるくらいの小さな穴が開いていた。
桜乃はココを抜けようとしたのだろう。
しかし、フェンスの前には木の枝が茂っていて・・・・・・

「…おおかた、この木の枝に髪の毛が絡まった、ってとこ?」
リョーマは木の枝を1本、指でつまんだ。
桜乃はこっくりと頷く。
「あのね…ココって近道なの・・・。」
「…でもコレじゃ、近道になってナイよねぇ?」
「う…どうしよう…髪の毛、とれないの〜…」
しゅーんとしてしまう桜乃を見、リョーマは大きくため息。


―――乗りかかった船、ってヤツ??―――


やれやれ……というカンジでリョーマは枝に絡みついた髪の毛に手をかけたのだった。



「そんな悪いよ。」「もういいよ、リョーマくん部活に行かなきゃ」「大丈夫!自分でなんとかするよ」

…暫くの間桜乃は言い訳のように言い続けていたが、リョーマの「うるさい!」の一言で黙り込んでしまった。


涙目でもがいてたヤツが独りでなんとかできるとは思えない。


これがリョーマの結論だった。


リョーマは忙しく指を動かして絡んだ髪をほどいていく。
しつこく絡まっていたように見えたが、意外にもほどくのは簡単だった。

・・・・・・三つ編みを枝に絡ませるなんて、器用なのか不器用なのか・・・・・・。

あと少しで全部ほどけそうになったとき、


「あ、ひこうき曇!」


真っ青なキャンバスにひとすじ。
絵の具をたらしたような、まっすぐな線。

「すごーい……。」
「・・・・・・・・・。」

ゆっくりゆっくり…桜乃は真っ白いすじが伸びていくのを見ていた。
リョーマは思わず、ほどきにかかっていた手を止める。


ふわり、ふわり、風が吹いて。


さらり、さらり、髪が踊って。


ゆったり、ゆったり、時が流れていく。


さっきまでのせわしない時間はどこへやら。

「キレイだねー…。」
「まぁ…ね…」


もう少し、あと少し。


このまま時間を止めていて。





不本意にもこう思ったのは、青のまほうのセイなのかもしれない。





ありがち髪の毛ネタ。

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