「ロッキく〜ん!ミステリィ〜な話を聞いたよ〜vv」
弾んだ声と共に、大きな洋館の扉をくぐる少女。
そしてその先には、うんざりしたような顔をした少年。
これが、彼等の日常。
距離は7センチ
ヘンなところは研究熱心だと、ロキは思う。
「・・・・・・そうでなきゃ、毎日毎日退屈な話をしに来るハズないよねぇ、まゆら?」
ロキが言うと、まゆらは拗ねたように頬を膨らませる。
「違うもん。今日のはロキくんも絶対すごいって思うような話だもん!!」
そこまで言うなら聞こうじゃないか、そう言ったロキは机に頬杖をついた。
決して人の話を聞くのに相応しい態度ではないが、まゆらはそんなことは気にしない。
コレが、彼のいつものスタイルだからだ。
「うふふっ、驚かないでねv
・・・小指の爪をナナメに切ると、・・・なーんと!片想いが実るんだって!!」
後ろから、ぺっか〜ん!!という効果音が聞こえてきそうなくらいの得意顔で叫ぶまゆら。
ロキはというと、そんな彼女とは対照的に、完全に冷めた瞳をしている。
「・・・あのさぁまゆら、ソレのどこがミステリィ〜な話なのさ?」
「えええっ!だってスゴイじゃないっ!小指の爪をナナメに切っただけで、たくさんのカップルができるってコトだよ〜!?ミステリー!!」
「・・・まゆら、ソレはジンクスってやつだよ・・・」
「・・・え??」
まるで気づいていないという顔をする彼女。
「その話ってさ、『好きな異性にバレないように切ること』っていうオプションが付いてなかった??」
「・・・・・・・・・う、当たり。・・・でもなんで、ミステリーじゃナイの??」
「そんなの本当に起こる確証はナイ、どこにでもある一種のおまじないみたいなモンじゃないか。」
流れ星に3回願い事を唱えると、ソレが叶うとか。
出かけるとき、右足から靴を履いたらその日はうまくいくとか。
・・・・・・・・・そういう類のモノ。
だいたいこーゆーのって、年頃の女の子のほうが熟知してるモンじゃないか?
ソレをわざわざ、男の方が説明しないと理解できないだなんて。
「な〜んだ、ミステリーじゃないんだぁ〜・・・・・・」
ミステリーじゃないと知るや否や、つまらなそうな口調になるまゆら。
「・・・まるで、サンタクロースを信じる子供みたいだね、まゆらは。」
ロキの、呆れたような声。
しかしその反面、笑みがこぼれてしまう。無意識に。
彼女らしいとゆーか・・・・・・なんとゆーか・・・・・・・・・・・・
笑っていたロキだったが、ふと まゆらの指に目が行った。
途端、急に黙り込んでしまう。
「ロキくん、どうしたの??」
「・・・まゆら、その指もミス研の活動の一環なの・・・?」
不思議そうな顔で尋ねてきたまゆらに、ロキは静かに言った。
怒りを含んでいるように聞こえたのは、気のせいだろうか。
「・・・えっ!?」
指摘され、まゆらは自分の手に目をやる。
形良く整えられた爪のなかに一本だけ、わざとナナメに切られた爪。
まゆらは ばっと後ろに手を隠すと、えへへ、とぎこちなく笑って見せた。
「ふ〜ん・・・ホントに研究熱心なんだね〜まゆらは。」
皮肉っぽいロキの言葉に、ぶんぶんと首を振るまゆら。
「ちがっ・・・!?もう・・・ロキくんにはバレたくなかったのになぁ・・・効果なくなっちゃう・・・。」
「・・・は!?」
ほぉっと熱気を含んだような、彼女の小さな呟き。
思わず、ロキは耳を疑った。
・・・・・・・・・今、なんて・・・・・・??
「え・・・!?な、なんでもナイよ!?えっと・・・ロキくん、さすがは探偵サンだね!・・・あの・・・もう帰るね!」
むちゃくちゃなことを言いながら、まゆらは頬を真っ赤に染め、部屋を出て行く。
そんな彼女につられたのか、ロキの顔にも熱が昇った。
「・・・なんなんだよ、アレは・・・・・・・・・。」
アレじゃ、まるで・・・・・・・・・。
「・・・調子、狂うなぁ・・・・・・。」
ロキは前髪に手をやり、半開きのドアを見やると、甘酸っぱい溜息をついた。
少女がためしたジンクスは 破られたのか、そうでないのか。
それが解るのは これからもうちょっとだけ、先のおはなし。
梨織 沙雪さまのリクエスト、両想い一歩手前なロキまゆ文。
両想いちっくになってしまいました、ごめんなさい〜;
どうもありがとうございました!
