キミの笑顔を見た瞬間、新しいページが開かれた。
I'll be there for you.
放課後、少女が向かう先は 古びた洋館。
その時間、館の二階の窓から覗く人物は、少年から青年になった。
しかし、彼女を見守る優しい眼差しは変わらない。
そして、今日も元気に 少女は館の扉を開ける。
「こんにちわぁ〜 ロキくんっ!」
窓ぎわ、差し込む日の光に照らされて、青年の微笑む顔が見えた。
「いらっしゃい、まゆら。」
さらさらの 金色の髪。
すらりとのびた 長い手足。
そして 胸には大きなリボン。
「今日はね、おみやげ持ってきたの!調理実習で作った カスタードプディングだよv」
そう言った少女は 青年にめいっぱいの笑顔を向ける。
◇
「それにしても、本当にロキくんって甘いモノに目がないよねぇ〜」
スプーンに一口大にすくったプリンを載せたまま、まゆらは感嘆の声を上げた。
ソレもそのはず。
まゆらがプリンを半分も食べ終わらないうちに、彼は1コ全部をたいらげてしまったのだから。
「・・・確かに甘いモノは好きだケド・・・ボクが先に食べ終わるのは当たり前だろ。
まゆらよりも大きいんだから。」
「え〜〜〜っ!!この前までは私の方が大きかったもんっ!」
拗ねたように、ぱくっとプリンを口に入れるまゆら。
ロキは頬杖をついて、その様子を眺めていた。
・・・・・・・・・・・・・ああ、微笑ましいなぁ と。
まゆらもビックリしたんだろうな。急に大人の姿になった、自分を見て。
これまでに少しくらいは接触があったとはいえ、
自分と全然関係がない人間だと思っていた人物が、実は、ごく 身近にいた、なんてコトを知って。
ソレでも、ボクのコトを受け入れてくれたのは なぜ?
「・・・どしたの、ロキくん??」
急に黙り込み、遠くを見ていたロキ。
そんな彼を気にしてか、まゆらは目をしばたかせている。
―――どうか ボクに違いを教えて。
「・・・なんでもナイよ。」
ロキはそう言って、にっこりと笑って見せた。
すると、まゆらも安心したように微笑み返す。
―――ココロが・・・・・・もっとはっきり、見えればいいのに。
時計の音が ゆっくり響いて。
◇
「ごちそうさまでしたぁ〜!」
かちゃん、まゆらはスプーンを置いた。
そして ロキの皿と自分の皿をキッチンへ運ぼうとした、瞬間。
「・・・まゆらはさ、今のボクをどう思う?」
俯いたまま、ロキは尋ねた。
突然の問いに、まゆらは きょとんとしてロキを見ている。
「・・・どうって?」
―――なんとしてでも、答えを見つけなきゃ。
さらりと 風が揺れた。
◇
まゆらは、ロキの正面に立った。
そしてそのまま黙って ロキの手を取ると、ついっと自分の手のひらと重ねる。
「ま、まゆら!?」
予想外の彼女の行動に、当然ロキは驚くわけで。
しかし、当のまゆらは そんなコトお構いなしだ。
「・・・ロキくんの手、おっきい〜・・・・・・・。」
「・・・え?」
まゆらは、あっけにとられているロキの瞳を覗き込んで 笑った。
「パパの手よりも大きいよ。・・・私ね きっと、たくさんいろんなモノが守れると思うの。」
――・・・・・・・・・ボクが??
「・・・ふ・・・あはははは・・・・・・」
ロキは自嘲気味に笑った。
まゆらの答えが あまりにキレイすぎて。
思わず、彼女の華奢な肩を抱きしめていた。
「ろ、ろきくん〜!?」
胸の辺りで、くぐもった声が聞こえた。
確かに この手で、この腕で、まゆらを包み込んでやることができる。
・・・・・・・そう、彼女が 望んでくれるなら。
『ね、次は一緒にチョコレートパフェを食べに行こうね、ロキくんっ!』
沙緒さま、ありがとうございました!
