キミの笑顔を見た瞬間、新しいページが開かれた。



I'll be there for you.



放課後、少女が向かう先は 古びた洋館。
その時間、館の二階の窓から覗く人物は、少年から青年になった。
しかし、彼女を見守る優しい眼差しは変わらない。



そして、今日も元気に 少女は館の扉を開ける。



「こんにちわぁ〜 ロキくんっ!」



窓ぎわ、差し込む日の光に照らされて、青年の微笑む顔が見えた。



「いらっしゃい、まゆら。」



さらさらの 金色の髪。
すらりとのびた 長い手足。
そして 胸には大きなリボン。



「今日はね、おみやげ持ってきたの!調理実習で作った カスタードプディングだよv」



そう言った少女は 青年にめいっぱいの笑顔を向ける。







「それにしても、本当にロキくんって甘いモノに目がないよねぇ〜」

スプーンに一口大にすくったプリンを載せたまま、まゆらは感嘆の声を上げた。

ソレもそのはず。
まゆらがプリンを半分も食べ終わらないうちに、彼は1コ全部をたいらげてしまったのだから。


「・・・確かに甘いモノは好きだケド・・・ボクが先に食べ終わるのは当たり前だろ。
まゆらよりも大きいんだから。」
「え〜〜〜っ!!この前までは私の方が大きかったもんっ!」

拗ねたように、ぱくっとプリンを口に入れるまゆら。

ロキは頬杖をついて、その様子を眺めていた。
・・・・・・・・・・・・・ああ、微笑ましいなぁ と。






まゆらもビックリしたんだろうな。急に大人の姿になった、自分を見て。
これまでに少しくらいは接触があったとはいえ、
自分と全然関係がない人間だと思っていた人物が、実は、ごく 身近にいた、なんてコトを知って。







ソレでも、ボクのコトを受け入れてくれたのは なぜ?







「・・・どしたの、ロキくん??」
急に黙り込み、遠くを見ていたロキ。
そんな彼を気にしてか、まゆらは目をしばたかせている。





―――どうか ボクに違いを教えて。





「・・・なんでもナイよ。」
ロキはそう言って、にっこりと笑って見せた。
すると、まゆらも安心したように微笑み返す。





―――ココロが・・・・・・もっとはっきり、見えればいいのに。





時計の音が ゆっくり響いて。







「ごちそうさまでしたぁ〜!」



かちゃん、まゆらはスプーンを置いた。
そして ロキの皿と自分の皿をキッチンへ運ぼうとした、瞬間。



「・・・まゆらはさ、今のボクをどう思う?」

俯いたまま、ロキは尋ねた。
突然の問いに、まゆらは きょとんとしてロキを見ている。

「・・・どうって?」





―――なんとしてでも、答えを見つけなきゃ。





さらりと 風が揺れた。







まゆらは、ロキの正面に立った。
そしてそのまま黙って ロキの手を取ると、ついっと自分の手のひらと重ねる。

「ま、まゆら!?」

予想外の彼女の行動に、当然ロキは驚くわけで。
しかし、当のまゆらは そんなコトお構いなしだ。




「・・・ロキくんの手、おっきい〜・・・・・・・。」
「・・・え?」



まゆらは、あっけにとられているロキの瞳を覗き込んで 笑った。



「パパの手よりも大きいよ。・・・私ね きっと、たくさんいろんなモノが守れると思うの。」





――・・・・・・・・・ボクが??





「・・・ふ・・・あはははは・・・・・・」

ロキは自嘲気味に笑った。




まゆらの答えが あまりにキレイすぎて。

思わず、彼女の華奢な肩を抱きしめていた。

「ろ、ろきくん〜!?」

胸の辺りで、くぐもった声が聞こえた。





確かに この手で、この腕で、まゆらを包み込んでやることができる。



・・・・・・・そう、彼女が 望んでくれるなら。











『ね、次は一緒にチョコレートパフェを食べに行こうね、ロキくんっ!』





沙緒さま、ありがとうございました!

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