それは、ある雨の日の出来事。


HA TI MI TU v Rain


一人の少女が、雨の中を傘もささずに走っていた。


「うわ〜ん このまゆらちゃんが傘を忘れるだなんてぇ〜〜探偵助手として失格かしら〜??」
だって、いきなりの雨だったんだもん・・・少女はひとりごち、やがてたどり着いた一軒の洋館の前に立った。
「ふぅ〜やっと着いたぁ〜・・・あ〜ん、びしょびしょだよぉ〜・・・」
かちゃ、と ドアノブを回す・・・が・・・・。



「・・・あれぇ・・・?」



・・・・・・・・・・開かない・・・・・・・・・・・。



「ロキくんも闇野さんもどこに行っちゃったのかなぁ?」

仕方ない、帰ってくるまで待ってよ〜っと!

まゆらは、玄関口に腰を下ろした。



しかし、独りで待っているというのは とんでもなく暇。
辺りには パラパラと、雨の音しか響かない。

まゆらは、頭上の暗い空を見上げた。

「・・・こういうのを、待ちぼうけっていうのよね〜・・・」

歌でも歌ってようかな・・・などとのんきに思っていた そのとき、


ぴしゃ〜ん!!ゴロゴロ・・・・・・・・・・・・・・・


雷が鳴った。すごく近い場所で。
まゆらも女の子だ、雷が平気なはずはない。しかも独りで・・・・・・・・
思わず、身を縮めてしまう。

「・・・ミステリー小説でよくあるよね、こういうの・・・・・・」


しかし いくらミステリーマニアだといっても、さすがにこの状況は・・・・・・・・・・



―――こわい・・・!!―――




「・・・ロキくん・・・」

不意に、彼の名前を呼んでいた。
もし、このまま誰も来なかったら・・・・・・?


「はやく・・・早く帰ってきてよう・・・・」


まゆらは半べそだった。

・・・・・・・・ミステリー小説のヒロインも、こんな気持ちなの??



ピカっ!!



空が怪しく光る。
まゆらは俯いて、ぎゅっと目を閉じた。




えーとえーと・・・こういうとき ミステリー小説だったら、
ヒーローが来て、ヒロインを・・・・・・・・・・・・・・





「まゆら!?」




聞きなれた声、安心できる声。

「・・・・ロキくん?」

まゆらは そっと顔を上げた。

「なにしてんのさ、そんなトコで。鍵、開いてないの?」



・・・・・・ロキくんだぁ・・・・・・・




ソレは、無意識に。
まゆらは雨の中に飛び出し、傘を持って近づいてきていたロキに抱きついていた。
傘が地に落ち、雨を弾いている。


「ま、まゆら・・・??」
「・・・・こわかったの・・・・・・」


耳元で呟かれたまゆらの言葉に、ロキの顔色が変わる。

「・・・・な〜んてね!」


まゆらはぺろっと舌を出し、何もなかったかのように素早くロキから離れた。
そして、彼が落とした傘を拾って 悪戯っぽく微笑む。

「ほら〜早くぅ〜ぬれちゃうよ??」

そこに、買い物袋を提げた闇野がやってきた。

「あれ、まゆらさん〜いらしてたんですか?」
「そ〜ですよぉ!こんなにぬれちゃったんですから〜」

すみません〜と、闇野は鍵をとりだし、開けている。
まゆらは、未だぼーぜんとしているロキに言った。

「ロキくんたちを待ってる間ね、私、ミステリー小説のヒロインみたいだったの。
さっきのはね、ソレの続きv」
「・・・ふうん。そんなまゆらの遊びにつき合わされちゃーたまんないよ・・・」

ぶつぶつと文句を言いながら、ロキは屋敷の中に入った。
そんな彼の後をついていくまゆら。





―――ホントはね、あのとき・・・・・・―――





かすかに甘い、はちみつみたいな・・・・・・

それは、ある雨の日の出来事。



氷山のロキまゆ処女作……です(笑)

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