大堂寺 操。彼は娘をこよなく愛する神主だ。
ある日 いつものように境内の掃除をしていた彼の元へ、手紙を持った使い魔が現れた。
その使い魔の主はもちろんあの人。
なんとなく漂ってくる不穏な空気に、操はぶるっと肩を震わせる。
今日はそんなに寒くもないのに感じる悪寒。風邪だろうか。
操は使い魔が差し出す手紙を無言で受け取り、封を切って便箋を開く。
するとそこには、彼の愛する娘の名前が。
「まゆらっ……!」
娘の名前を見つけたとたん、手紙にかぶりつく操。
「まゆらを返して欲しくば、今すぐ駅前の喫茶店へ来い、だとぉ〜…!?」
思わず声に出してしまう。
めまいのする思いを抑えつつ、なんとか全文を読み終えた操。
最後に目に入った差出人の名前は、彼の最も苦手な少年の名前であった。
或る日の狂想曲
喫茶店。
着の身着のままでやってきた操は、店内をぐるりと見渡す。
手紙に書かれていたのは確かにこの場所。
「ここに何があるというのだ……」
ふと正面を見ると、見覚えのある少年が涼しい顔をしてひらひらと手を振っている。
……あの顔は、忘れたくても忘れられない。
「き…貴様、まゆらをどうしたのだぁ〜〜!!」
◇◆◇
闇野(以下『闇』) 「はい〜みなさんこんにちは〜v」
えっちゃん 「ぷにゃにゃにゃにゃ〜!」
まゆらパパ(以下『操』) 「(左右を見回す)なっ…なんだこの空間はっ;」
闇 「(まゆらパパに深々とお辞儀をして)本日はお日柄も良く、第一回ロキさまうきうき座談会を開催したいと思います〜!」
操 「なんじゃそりゃ〜!!」
ロキ 「何って…言葉のとおりだよ。ちょっと話したいコトがあったからね、ヤミノくんに会場設定をしてもらったのさ。」
闇 「座談会といえば、この形式かと思いまして♪ナレーションは闇野でお送りします〜。」
操 「ちょっと待てっ!じゃーこの手紙はなんなんだっ!?」
ロキ 「あぁ〜。ソレはまゆらパパを帯び寄せるために書いた……」
操 「なに!?それじゃまゆらはここに居ないのかっ!?…騙された……(がっくり)」
ロキ 「(ずいっとまゆらパパに詰め寄る)じゃ早速だケドー…まゆらには今恋人がいるのかっ!」
操 「Σっ…!?なんでわしが貴様の問いにならんのだっ!」
ロキ 「まあまあ。まゆらパパなら知ってるんでしょ?仮にも父親なワケだし。」
操 「う…父親といってもなぁ…淋しいもんだぞ…最近はミステリーなんぞに現を抜かし、わしと一緒にいる時間なんて…(ぶつぶつ)」
闇 「パパさんがしゃがみこんでのの字を書いてますねぇ…悲しい父の背中です。」
ロキ 「(ヘンなところで大堂寺家裏事情が見えたなぁ…)…ってコトは、まゆらパパも知らないんだ?」
操 「うっ…知ってても貴様には教えんっ!」
ロキ 「らちがあかないなぁ…じゃー気を取り直して第二問!」
操 「……クイズの時間なのか…コレは……(げっそり)」
ロキ 「最近のまゆらの寄り道処はどこだと思う?」
操 「そんなもの、聞かなくても解るコトだろーがっ!貴様のところに決まっておるだろう!?
おかげでわしとまゆらの親子で和み時間が減って減って……(泣)」
闇 「それはそれは……淋しいでしょうねぇ…(もらい泣き)」
ロキ 「うーん……残念だケド、最近まゆらはウチに来ないんだよねぇ〜。」
操 「なぬ!?お前の所以外にまゆらがどこへ行くとゆーのだっ!?」
ロキ「ソレって、ボクとまゆらのコトを認めてくれてると受け取ってもいいのかな??(にんまり)」
操 「都合よく解釈するんじゃないっ!……しかし、まゆらはお前のところにも来てないのか…一体どこで道草をくっているのか……」
ロキ 「やっぱりまゆらパパも知らないのかぁ〜」
操 「……し、知ってても貴様にはっ………」
闇 「もはや強がりにしか聞こえませんねぇ〜。」
えっちゃん 「ぷにゃにゃ〜」
ロキ 「そんなまゆらパパにひとつ、有力情報をあげよう。」
操 「…なんじゃそりゃ。」
ロキ 「最近、まゆらはナルカミくんと一緒にいる姿をよく目撃されている!」
操 「ナルカミ…とゆーと、あの勤労少年か?クラスメイトなんだから一緒にいても不思議は……」
ロキ 「甘いね。ただのクラスメイトだと思っていた相手が実は……とか、男女にはよくある話なんだから。」
闇 「さっすがロキさま!よくご存知で!」
操 「…すると何か?あの勤労少年とまゆらが………」
ロキ 「うーん、二人も高校生だしねぇ……」
闇 「お父様にも内緒にしたい仲なのでしょうかね?」
ロキ 「…オトナのお付き合いってヤツ??」
操 「Σっ……なにぃ〜〜!??ゆ〜る〜さ〜ん〜!!!」
けたたましい音を立てて、操は店を飛び出していった。
その後姿を余裕の表情で見送っている主人に、闇野はそっと話しかける。
「……行っちゃいましたね。」
「…だね。まゆらに蔓延る悪い芽を摘むにはまゆらパパが一番。」
「ロキ様自身、最近まゆらさんが来なくて歯がゆい思いをしてらしたんですよね。パパさんを使って解消なさるなんて、さすがはロキ様!」
「……ヤミノくん、キミもなかなか言うねぇ。」
くすくすと笑う闇野に、ロキはばつの悪そうな目で睨んだ。
「ソレにしても、パパさんはまゆらさんに近づく男は片っ端から駆除して行く気なんでしょうか?なかなか手ごわいですねー。ロキさま?」
「まあボクの力を持ってすれば、まゆらパパに認めてもらうなんて雑作もナイさ。」
ウエイトレスが運んできた紅茶を穏やかにすするロキ。
のどかな時間を過ごしている彼らとは反対に、今頃どこかで少年と中年の追いかけっこが繰り広げられているに違いないのであった。
詩音さまのリクエストで、『ロキVSまゆらパパの座談会』でしたー!
どうもありがとうございました!
